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  • 有賀 冬
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  • ギャー!大変更新しておりませんでした!
    調子が戻り始めたので、またチョコチョコ更新再開いたします。


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[ マッド・モーゼルのはなし ]

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 マッド・モーゼルはうさぎのような耳の生えた、大きな大きな生き物でした。
 白い毛皮にずんぐりむっくり。森にはほかに、彼とおんなじ生き物はいません。
 それでも優しい彼のもとには、たくさんの動物たちが集まります。

「リンゴがなっている。どうしよう、食べてもいいのかな?」
 チチチ、と小鳥が答えます。
「食べなさい、マッド・モーゼル。それはあなたのものだから。
 食べてはいけません、マッド・モーゼル。それはあなた以外の腹を満たすためのものだから」
 マッド・モーゼルはリンゴをかじって、残りをみんなで分けました。
 そんなふうに、たのしくたのしく暮らしていました。

 ある日カラスがいいました。
「やァ、マッド・モーゼル。君はいつも山奥で、ひとりぼっちで過ごしちゃァいるが、それで幸せになれるのかィ?」
 マッド・モーゼルは首をかしげて聞きました。
「しあわせ? それはなんだい?」
「鳥や獣と遊ぶより、ずゥっと楽しくてエキサイティングな事さァ! 街に行けばもっともォっと面白いことがたくさんたァくさんあるのだゼ!」
 山を降りたマッド・モーゼル。白い毛皮の異形な彼に、人々は石のつぶてをなげつけます。
 ばけもの、ばけもの。聞きなれない名前で呼ばれ、自慢の毛皮もどろだらけ。
 悲しくなったマッド・モーゼル。ぽつりと小鳥に言いました。
「ああ、僕には幸せなど、別段必要ないものなのだ」

 森に帰ったマッド・モーゼル。いつもどおりの暮らしです。
 鹿と木の実を食べました。なぜだか楽しくありません。
 キツネの子供と毛づくろい。ふしぎと楽しくありません。
 ばけものと呼ばれた思い出が、胸をしくしく締めつけるのです。
「こんなに苦しいものならば、幸せなんか知らなきゃよかった」
 マッド・モーゼルの目からぽろり。涙がひとつぶこぼれて落ちます。
 チチチ、と小鳥が言いました。

「泣かないで、マッド・モーゼル。泣けば悲しみは増すばかり。
 泣きなさい、マッド・モーゼル。泣いて忘れてしまいなさい」
 鳥の答えに、彼は首をふりました。
「泣かなくてもつらいのは変わらない。泣いても忘れることはできないよ。
 僕はもう、もとにもどることはできないんだ」

「あなたは幸福です、マッドモーゼル。みんながあなたを愛しているから。
 あなたは不幸ね、マッド・モーゼル。皆がどれほど愛そうと、あなたはそれに気がつかない」
 小鳥はチチチ、涙をついばみ言いました。
「マッド・モーゼル、選びなさい。あなたの道を、あなたの手で」

 マッド・モーゼルは旅に出ます。
 いろんな世界を知るために。
 マッド・モーゼルは旅に出ます。
 いろんな幸せを知るために。

 マッド・モーゼルのいなくなった森の中、青い小鳥がチチチ、一声鳴いて泣きました。

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[ 創作短文 / 2006.05.05 ]






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