やちおさんハイブリッド!

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  • 有賀 冬
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或る管理人の記録

  • ギャー!大変更新しておりませんでした!
    調子が戻り始めたので、またチョコチョコ更新再開いたします。


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[ アカマの山の化け狐 ]

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 アカマの山の化け狐、道士の爺につかまった。ぐるりと鎖に取り囲まれたが最後、泣こうがわめこうがあがこうが、二度と逃れ得ぬぐるぐる巻き。

 天術外法の全てを極めた化け狐。悪事の限りを尽くした報いを受けるのだと、あまたの生き物の恨みの念、死よりも恐ろしい断罪が下されるのだと。
 誰もがそれを待っているのだと、キツネは思っていた。
 己が憎まれていることは、キツネ自身が一番よく知っていたんだ。

 ちいっとも反省なぞしちゃいなかったがね。

 殺せというキツネを前に、爺はカカと高笑い。
「さぁて、どうしたもんかのぅ。お前を殺すのは簡単よ。しかしお主は殺すにゃ惜しい」
 惜しいだ? ふざけんな、てめぇの都合で生かされたかねぇよ!
「ふむ。なれば引導を」
 爺が指で印を切る。途端に鎖が生き物のように、キツネをぎゅうっと締め上げた。
 いてぇ! 苦しい! 死ぬ! 死ぬ!
 七転八倒するキツネ。爺はにやりと笑って鎖をゆるめる。
「命は大切にするもんじゃ」
 立ち去る爺の背中を見上げ、ぐるぐる巻きのキツネは呟く。
 ……このままじゃオレ、飢え死になんだが。

 爺は次の日もやってきた。その次の日も、また次の日も。
 腹を減らしたキツネの目の前に、痩せた魚やキノコなど、抹香臭い食い物を落とす。
 キツネは了解も得ずにぺろりと平らげ、爺にぶつくさ。これっぱかりじゃ足りねぇよ。
 動けぬキツネの前にぴいぴいぴい。ヤマウズラが寄って来る。
 しめた! 食いつこうと口をあければ、鎖がぎゅうぎゅう締め上がる。
 ぴいぴいぴい。まるまる太ったウズラは無防備に目の前を通り過ぎていく。
 がくり、とキツネは肩を落とす。じゃらり、と鎖が鳴った。
 畜生、拷問じゃねぇか。
 カッカッカ、と爺は笑う。
 笑うんじゃねぇ! まったく爺の食い物は、腹の足しにもなりゃしない。肉だ、肉だ、肉を寄越せ。
「ふむ、お前が要らぬというなら要る者にやろう」
 豆をばらり、ウズラの前にばらまいた。
 慌てるキツネをよそに、ウズラは無邪気に豆をついばむ。
 ふざけんな、俺ンだろが!
 ウズラをおいはらおうとじたばたするキツネ。飯を取られて怒ったウズラはキツネに群がり攻撃を開始。
 畜生、痛ぇ! 毛ぇむしんな!
 コラ爺! 腹抱えて笑ってんじゃねーよ!

 そしてそのまま幾年かが過ぎた。

 ある日キツネは気がついた。
 月日のせいか爺いが耄碌したせいか、鎖の封印が緩んでいる。ぎちぎち身動きもとれなかったそれが、今じゃすっかり緩々だ。
 もう少し、あと少しでこいつを破れる。
 ただ、それには力が足りない。
 ぐぅ、と腹が鳴った。

 ぴい。キツネの鼻先をウズラがのぞきこむ。
 爺のやってくる足音が聞こえる。
 いつもと同じ、爺の顔。
 なんだかひどく、年食って見えた。
 足取りはよぼよぼとやよりなく、おちくぼんだ目に力はない。
 じゃらり。キツネが顔を上げると解けかけた鎖が音を立てた。
 だから、した。

 あっという間の出来事だった。
 ぐるぐる巻かれたまんまのキツネ、跳ね起きる勢いで爺の喉笛に食らいつく。
 これっぽっちもためらわなかった。
 久しぶりの肉は血は、甘くあまく、キツネの腹に染みた。


 やい爺。
 ひでぇ呪いを残していきやがった。
 鎖を破って腹は満腹。
 これからまた娑婆で好き放題にやれる。俺を馬鹿にした連中にも仕返しをしよう。ウズラなんぞ片端から丸のみだ。前みたいに、いや前よりもずっとひでぇ悪事をやってやる。
 最高だ。ゲラゲラ笑い出したくなるくらいにさ。

 この気分を一番に知らせたいのはあんただったよ。
 なぜだか、涙が止まらない。

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[ 創作短文 / 2006.05.16 ]






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