やちおさんハイブリッド!

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  • 有賀 冬
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或る管理人の記録

  • ギャー!大変更新しておりませんでした!
    調子が戻り始めたので、またチョコチョコ更新再開いたします。


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[ スモークリウム ]

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 青く透明、丸くて薄い正体不明の小さな板。
 「人魚の鱗だぜ」との触れ込みで、如何物好きの友人がくれたのだ。
 ついこの間、猿の手だと騙されて赤子の腕を買ったばかりだと言うのに、懲りない奴。
 煙草の一箱でもくれたほうがまだましだ。少なくとも半日分の暇つぶしにはなる。

 飽きて鱗をちゃぶ台の上に転がすと、歪曲した軌跡を描いて灰皿にぶつかる。
 そのままゆらゆらと倒れた。チン。澄んだ、ガラスのような音。
 油膜のような表面にゆるやかな波紋が広がり、電球の光を鮮やかに跳ね返す。人魚のものというよりは、蝶の羽の色合いだ。
 何で出来ているのだろう。電灯に透かして見る。
 ゆらり、ゆらゆら、光があふれだした。

 視界が青に染まり、僕は慌てた。手を動かすと、ざぼぉん、液体を殴る音。
 水だ。部屋の中が、クリアな水に満たされていく。
 見上げれば、低い天井と電灯の間をすりぬけていく、蒸気鰯の群れ。
 僕の紫煙をついばむ、半透明の仙魚たち。
 天井板の透き間からは、鰓の生えた人間の姿がひとつ、ふたつ。さざなみのように聞こえる笑い声。

 僕は気泡を吐き出した。ハッカの匂いの水が流れ込んでくる。
 不思議と息は苦しくない。吸って、吐いて、心地良い呼吸。鮮やかな酸素が肺を満たす。
 天板から滑り出てきた人魚が、僕の頬に軽やかなキスをした。瞼の裏に星が飛ぶ。
 僕は人魚のか細い腰を抱き寄せた。
 額をあわせ、僕らは微笑みあう。
 あいつも、たまにはいいものをくれるじゃないか。

 三十分後、僕は鱗を叩き割った。きらきらした音を立てて、青い破片は粉々になる。
 幻影の魚たちが、畳の上であっというまに干上がり、溶けていく。
 ヤニで黄ばんだつまらない電灯の下、僕はびしょびしょの前髪をかきあげ、湿気た灰を落とした。

 盲点だった。水の中じゃ、煙草が吸えない。
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[ 創作短文 / 2006.06.26 ]






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