やちおさんハイブリッド!

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  • 有賀 冬
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或る管理人の記録

  • ギャー!大変更新しておりませんでした!
    調子が戻り始めたので、またチョコチョコ更新再開いたします。


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 父方の祖父が嫌いでした。
 無意味に怒って、殴るのです。
 機嫌の悪い時に近くにいると「何でクシャミをした! 馬鹿にしとるのか!」と意味のないいいがかりをつけるのです。祖父が気の済むまで暴行は終わりません。謝っても、意味がない。
 その時の俺はまだ子供でした。怒られたら「俺が悪かったのか」と反省しました。祖父を怒らせたのは俺の責任だと思って耐えました。父も母も見て見ぬふりでしたし。
 でも、ストレスはたまるのです。そういうときは蟻を潰して遊びました。黒い蟻の頭を、胴を、腹をプツプツと。単純作業に向いているのかも知れません。時間忘れて、延々とやりました。今でも時々やりますよ。プツプツ、ゴマを潰すように。

 命?
 ああ、蟻の命。そうですね、命は大切かもしれません。
 でも、蟻ですよ? 昆虫じゃないですか? 誰だってゴキブリが出たら殺そうとしますよね?
 虫を殺したくらいで犯罪者扱いするんですね。最近の警察は怖いな。

 歪んでましたね、きっと。ずっと、子供の頃から。
 だから、祖父が死んだ時は驚きました。
 死体を見たら、ますますびっくりしましたよ。鳥ガラみたいに白くて細い。一ヶ月前には、鬼みたいに大きくて強かったのに。永遠に生きているのだと思っていたのに。
 あ、俺が殺したんじゃないですよ、病死です。
 殺したいと思ったのは、祖父が死んでからです。
 葬式のあたりから段々腹が立ってきました。洗脳が解けたというのでしょうか。理不尽な思い出が頭をめぐって、むかついてむかついて仕方がなかった。
 その場で死体を殴りつけることは流石にできませんでした。死んだ人間に、痛覚もありませんしね。
 復讐したのは、祖父が埋葬された夜のことです。
 深夜に墓地に忍び込んで、墓石を倒しました。
 あれね、少しコツがいるんです。
 重いから、蹴ったり殴ったりしても無駄です。体重をかけて、引きずり落とすんですよ。刑事さん、やったことあります? 冷たく、すべすべした石に、手をかけて。
 ずず、ずずずず。石と石がずれていく音。こすれて、削れて、ずずず、ずずずずずず、ずずず。
 ずどん。鈍い音を立てて墓石は地面に転がり、ばっくり二つに割れました。
 俺は墓石の上で飛び跳ねました。物凄い達成感でした。何かを成し遂げる、というのは気持ちがいいものですよね。
 俺の仕業だとはばれませんでしたよ、もちろん。

 ところで、さっきから気になっていたんですが、あなたの格好は何ですか?
 ふざけた格好ですね。着ぐるみですか? 俺は真面目に話しているのに。

 話を逸らせているわけではないですよ。せかさないでください。
 それからは墓石を壊すのが癖になりました。
 イライラすることがあると墓地に行き、ずずずずずずず、ずどん。ずずずず、ずずずずずずずず、ずどん。
 何度聞いても、いい音でした。あの音を聞くだけで、何も怖くない気分になる。
 落ちるだけで割れない事もありました。その為にハンマーも買いました。たたき割って、石の内臓を覗くとスーっとするんです。
 ずご、ずご、ずご、がり、ずご、ずず、ばきん、ずご。すべすべの石の、ぎざぎざの断面があらわになる。肉に混じった脂肪のように、白い石英の粒が不規則に並んでいる。ゾクゾクしました。
 受験の最後の月なんて、単語カード片手に墓地めぐりでした。

 幽霊? いるわけないじゃないですか、そんなの。見たこともありませんよ。呪いなんかあるわけない。非科学的な事言わないで下さいよ。
 俺のやった悪事は以上です。面倒ですから全部自白しますよ。どうせ未成年ですしね。
 罪状は何になります? 器物破損ですか?


「殺人だよ」
 刑事が告げると、少年はひどく顔をゆがめた。
 クーラーの冷気を削り取るように、一文字ずつ言葉を発する。
「何を言っているのですか? 俺の話を聞いていましたか? 俺は墓石は壊したが、人殺しはしていません」
「君のハンマーから被害者の血液が検出された。何人も、何人分もな」
「人殺しなんて頭の悪い真似、俺がするわけないでしょう? 何言ってるんだ」
 少年が椅子を蹴って立ち上がる。
「あんた、本当は刑事じゃないのでしょう? そんなふざけた格好をして、俺をだまそうとしてるのでしょう? 着ぐるみなんて着て頭おかしいんじゃないんですかあんたら!」
 刑事は壁に備え付けられたマジックミラーに目をやる。鏡面に映る自分は、いつも通りのスーツにネクタイ。ドアの前に立つもう一人の刑事も似たような格好。少々くたびれてはいるが、異常な服装はしていない。
「君には、オレたちがどう見えている?」
 眼鏡の奥で、神経質そうな少年の視線が引き絞られる。
「……石だ。墓石だ。墓石が、灰色のスーツを着ている」
 刑事たちは顔を見合わせる。
「落としやすそうな墓石だ。ずず、ずずずずずず、いい音のしそうな石だ。ずずず、ずずずず、ずずずず」
「君には、自分がどう見える?」
 刑事は、ミラーを指さした。
 少年は自分の鏡像を見た。目が見開かれた。両手が顔に、頭に触れ、ぶらりと落ちた。
 重く噛みあわせた歯と歯の隙間から、ずずずず、悲痛な音が漏れる。
「石だ」
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[ 創作短文 / 2006.08.31 / Co0 ]






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